「福島から語る」Vol.9 朝尾光二さん (2018年4月21日)

大熊町、双葉町は第一原発のお膝元なので、交付金がたくさんあったのです。だから小さい町が全然合併しないで10,000人規模の町が北からずっと5、6カ町村残っているのです。昭和の大合併、平成の大合併があったのですが、町村が全部合併せず、皆が独立独歩でいろいろなものを作っていたのです。箱物を作っても、潤沢なお金があったということもあるのですね。
善し悪しは別として、そういう状況だったのです。双葉郡として、広域での行政もやっているのだけれど、それぞれ別々の町です。意外と仲が悪いのです。皆、自分達で自分達のことができるから。これは東電の社員寮です。ここは何か作業をしていたのでしょう。
だから、こういう人達は入ってはいけないところで作業するので、放射線は大丈夫なのかということですが、何時間かおきに替わるようです。これは戸建ての町営住宅です。瓦のグシが皆ずれています。震災の時のままです。これは集合系の町営住宅です。このような状況が未だにあります。これはすぐ近くにある町の文化センターです。
ガラス張りの洒落た、なかなか綺麗なセンターです。これが福島県内でも有数の蔵書を誇ったと言われている図書館です。立派な図書館でした。時計台があって、四方に時計があります。これが2時47分で止まっています。地震があったのは2時46分でした。これは47、48分を指していますけれど、別の角度のところは少し動いていたらしくて、3時何分というのがありました。これは震災の時のまま止まってしまった時計です。
こちらの面を指している時計が48分位だったので、写真を撮ってみました。そこから案内してくれた方のお店に行く為に、県道沿いに残されたコンビニを撮りました。開けっ放し、逆光だったので、暗いですけど、ガラスも何も割られています。中に入ると、地震で散乱したのと、略奪というか盗難の後で、このような状況です。実際、中に入ってみると、匂いがすごいです。写真に匂いは出ませんけれど、7年経っていると、異臭がするのですね。こういう状況のまま、放置されています。これは略奪にあったコンビニのATMです。コンビニエンスストアってみんな、家庭や家族がオーナーでやっている。ところが、13日、「逃げろ」と言われたので皆、摂るものも摂らず、強制的にバスに乗せられて逃げたのです。結局、暴力団系で、しのぎの資金が要る人達は放射線なんて関係ないですから。だから、コンビニのATMはすぐ壊されたのです。現金が全部抜かれました。非常電源があったのかどうかわからないですが、銀行はさすがにすぐにシャッターを降ろして、すぐ現金を抜いたそうです。さすがに銀行はしっかりしている。コンビニは自分の家で営業しているのですから、その家庭の方々が居なくなると、もうどうにもならないわけです。
随所そこら中のATMが壊される。本当に、成程、そこに気付くか、立派だなと(苦笑)思いました。そこに知恵が回るかと思いましたけれど…。翌日、翌々日には、軒並み壊されて金が無くなっていて、ここ大熊の話じゃないですけれど、いわきの被災地でも有名な久之浜とか豊間という、いわき市内の津波でたくさんの犠牲者が出たところもあるのですが、翌朝、津波の後、行って、お札を拾っていた人がいたそうですから。農家とか漁師とかは『箪笥預金』なのですよ。