「福島から語る」Vol.11 松野みき子さん (2015年12月5日)

「眞こころサロン」を勉強の場に
その年の夏休みには、末期がんと闘っている主人の父の気持ちの安定を考え、子どもたちを連れ戻して、また家族一緒に暮らしていました。そして、最後を家族で看取ることができました。
子どもたちを連れ戻したことも、私がやって来たことも、子どもが大人になったら、母親の自己満足に振り回されたと思うかもしれません。あの時、避難させたままでいてくれたらと、言われるかもしれません。一緒に逃げてくれなかった、入学式にも出てもらえなかった、と言われるかもしれません。私は、連れ帰った子どもたちに恥じないことをしたい、それが誰かの為になるなら、こんないいことはないと思っています。
サロン活動は、新しいコミュニティ作りにも役立つと思います。これから新たな土地に移っても、自分から言葉をかけ、自分から地域活動に参加できるように、「眞こころサロン」を勉強の場にしてもらいたいという気持ちで活動を続けてきました。

大切なのは助け合い
これから南相馬市は大きく変わります。仮設住宅はいずれなくなります。再建された方も、災害公営住宅に移った方も、引っ越された時は、仮設に入った時の気持ちを思い出すようです。ただ再建された方はそこが新たな居場所と気持ちもついて行くでしょう。大きな災害公営住宅は仮設住宅に入居した時と気持ちは変わりません。自分でコミュニケーションを取らなければ自分の居場所もできません。
阪神淡路大震災では、新たな生活を始めてから孤独死が増えたと聞きます。これまで仮設住宅での生活を耐え、やっと新しい生活を始めても、人との繋がりがないことは孤独です。私が活動に参加できる内は、そんな方のこれからを少しでも支えたいとこれまでの活動を生かした何かを今後に繋げていきたいと思っています。
今、「眞こころ」は新たな生活を始めた人へのサポートもしています。仮設住宅を出られた方もサロンへ出かけて来ます。4年以上も共に過ごしたこともありますが、新たな場所での生活に少しずつしかなじめないこともあるのかもしれません。
いくら再建しても、震災前の生活とは違うものです。時間が過ぎても、元に戻ることはできません。サロンで共に暮らした人たちは、皆が新しい生活を始めるまで、助け合うことを大切にしたいと感じるのだと思います。

前向きになれば生き方は変わる
まだまだ震災からの本当の復興には遠いです。そして、福島は、浜通りだけが被災地ではありません。今も風評被害に多くの方が苦しんでいます。「福島は安全!」なんて言えません。
しかし、安全な物も、安全な所もたくさんあります。自然も多く、温泉もあり、海はきれいで、果物もお米も、もちろん魚も、とても美味しく、東北とは言っても、冬は比較的暖かく、夏は涼しい。震災があって福島を考えることも、見直すこともできました。なんていい所なのだろうと。震災前には感じなかったことが、今はすごく良く見えます。
集会所に来る方は、震災は悪いことばかりじゃないと言います。あんなことがあったから、感謝の気持ちも増えたし、日々の生活も幸せに感じられる。何といっても、お友だちもたくさんできたと、笑顔で言ってくれます。前向きにさえなれば、生き方は変わるんだと教えられました。
そんな南相馬の人たちを、福島を、今後とも応援、よろしくお願いします。ありがとうございました。