「福島から語る」Vol.1 髙橋美加子さん(2013年3月8日)

ところがそのうちに「強盗する」という男の子や、偽札を発行する子どもまで現れました。で、一週間で銀行はつぶれました。何か、すごく根本的なことですよね。
そんな中で、大人たちは材木などをもらってきて、高い塔を作り始めました。男の人たちってそういうのをやり始めると止まらなくなるんですよ。その塔から大人や高校生が飛び降りる。すると子どもたちは注意深く観察して、3歳ぐらいの子どもたちでも天井ぐらいの高さから飛び降りるんです。子どもって賢いなと思います。誰かが飛ぶのをちゃ~んと観察し、行けるところまで行ってもダメだと思ったら引き返し、また見てて、また少しずつ登っていって、最後には飛び降りるんです。
それを見た親のほうが感動するんです。そして子どもにすごく優しくなる。子どもの可能性を、親が肌で感じるんですね。そうすると、子どもを大切にするようになるんです。子どもは自分でちゃんとやっていく。日本の未来は保たれていきます。
どなたの中にもこの「子ども」がいます。「子ども」、つまり人間としての感性を取り戻し、柔軟な柔らかな心になることから始めてください。

 いま南相馬では、町づくりに取りかかろうという大人も若者もいっぱい出てきていて、そういう活動をしていると、私たちは「神様が来た」と言うんですが、極端な場合には3時間で必要なものが届いたりします。「国にできねえこと、俺たちでやっぺな」という意識の高まりの中で、「南相馬バスツアー」というスタディーツアーも企画されています。
津波の被災地に行って苦しくなった、という人がいます。その場に行かなければ体験できないことがあります。外から来てそれを体験した人に、道端で出会った土地の人が、2年間誰にも話せずにしまい込んでいたことを話す、関係ある人には話せないことを、見知らぬ旅人だからこそ話せるということがあります。だから南相馬を訪れて、知って、触れ合ってほしいのです。
3.11には色々な行事が行われますが、何もしない、静かに過ごすという人もいっぱいいます。胸が苦しいんですよね。未だに、やっぱり涙が出てくるんです。でもそういう感覚を大事にしていきたいんです。人間って、嫌なことは忘れたい。でもなかったことにしたら終わりです。
その記憶を忘れずに、私たちはこれから「希望」という名の高い塔を築いていかなければならないのだと思っています。

私たちの現状をないがしろにして、新政権は原発再稼働へと舵を切りました。世の中も電力が値上げになると大変だと言います。でも、地元で暮らす私たちは「原子力で電気を作るのはもう止めてください」という長いフレーズで訴えます。皆さんにも同じ言葉で発信していただきたいのです。危機感を忘れた「善人の沈黙」が日本を誤った方向へと導いてしまうことを、意識してほしいです。
最後にもう一度お願いします。「原子力で電気を作るのはもう止めてください!」という声を一人一人がしっかりと上げてください。