「福島から語る」Vol.12 廣畑裕子さん (2019年9月7日)

コミュニティができていく
コミュニティ再生ということで話しましたが、コミュニティはだれかが作るものではなく、できていくものだと思います。そこだけは伝えたいと思います。
どこで何をするかではなく、私とあなたのつながるツールが、今日みなさんに会えたことから「どっかで1ヶ月前に会ったよね」と言われたら、とてもうれしくなります。
だれも知ってる人がいない人や、どうしたらいいかわからない人には、花を作るか、猫を飼いなさいと言います。花好きの人は、この花はなんだと足を止めてくれるかもしれません。猫好きな人も来るかもしれませんが、その前に猫は勝手に逃げますから、逃げた猫を追いかけて、飼い主と友だちになるかもしれません。
コミュニティはケンカしたり、話したりしてできていくものだと思います。わざわざ「私とあなたはつながりましょう」といっても嫌いなものはつながりません。強制的は大分きついですよ。それは避難所でとてもきつかったからです。大丈夫かな私、と思いました。そこから少しずつ今のようになってきました。
今日お渡しした資料に小高大蛇伝説というものが入っています。今日、わざわざ持って来ました。
私の話よりも皆さんに来てほしいという思いから、最初から小高のパンフレットを渡しておけば、そのうちだれか来てくれるだろうと思っているからです。食べるところ、行き方も説明されています。ぜひ来てください。

わが町小高
今小高の人口は3,600人です。
2011年3月は13,000人弱でした。そこからゼロになりました。全員避難しました。
2016年7月の避難指示解除の時、386人帰って来た。次の日は500人いると言われていた。半年後に1,000人になりました。その半年後に2,000人に。その1年後に3,000人。そして今3,600人になりました。世田谷区に勝っているかどうかわかりませんが、世田谷区よりも増加のスピードは人口比率からいったら勝っていると思っています。
2019年9月に3,600人という町は東北に限らず、日本中にたくさんあると思います。それが、1年前は何人だったんですか。その1年前は何人だったんですか。そこはちょっとゆっくり考えようという話をしています。私たちは2016年7月から3年で3,600人まで来ました。どこかのAという町が5,000人、4,000人、3,600人と来たのか、そこはゆっくり考えなければいけません。
過疎が止まったという話が時々出ます。町でいつも話していることです。人口を増やしたいのです。過疎で困った、人が足りないという時、人の顔が沈んでいます。でも私は3,600人という町は、もしかして、人口増加では日本でいちばんかもしれないとわざと言います。
過疎の話で聞きたいのは、人が減ることに対して泣いていたり、困っていて悲しんでいて怒っていたら、その町に、あなたは行きたいですか?ということです。3,600人がみんな、とりあえず楽しいからいいやと思って、笑っている楽しい町には人は増えます。あなたが住んでいて、過疎で困っている、泣いている町に人は来ません。
過疎対策を心配して悲しんで笑ってない町に、私を引っ張りたいですか。自分が楽しいと思ってないところにあなたも来て楽しくなくなれと言えますか。自分は楽しいからあなたも来て一緒に楽しみましょうとは言えますよ。だから、3,600人ってすばらしいと思っています。
だから、今の小高を私は大好きです。
なぜなら、自分が選んで小高に住んだ人たちです。帰って来た人たちではありません。
避難指示解除というのは、その場所がアメリカの人も、沖縄の人も、北海道の人も、小高を選んでもよくなった日です。小高の人が帰ってきなさいと言われた日ではありません。
北海道の人、2名いますが、急に小高に住み始めました。元々小高の人ではないのですけど。
避難指示解除というのは、そこを選んでもよくなった日です。
楽しい町には人が増えていくという希望をもって、これからもいろいろやっていきます。

今日はありがとうございました。