「福島から語る」Vol.6 柳沼千賀子さん(2013年11月15日)

 私たちは「福島やさい畑」を立ち上げました。原発事故後、農家が大変な状況になってしまったことがテレビで報道されていたことがきっかけでした。農業は人が生きていく上でなければならないものです。他の職業はあれば便利ですが、それがなければ人は生きていけないというものではありません。農業は人と神様との合作です。被造物である人間が神の恵みによって生かされていることを知る場でもあります。福島は、農業従事者が日本でも最も多い県ですが、その福島がこのようなことになったということは、文明国日本に対しての神様からの警告ではないかと感じています。作物は労働の実り、命の糧、大地の恵みです。それを私たちは忘れているのではないでしょうか。現代の日本人はお金さえあれば何でも手に入ると思っています。日本になければ、海外から輸入すればよいというものではないのです。海外の物は、農薬の規制もゆるく、どのように作られているかも不明です。私たちは、食べるというのはどういうことか、命を支えている食物について、日本人は根本から再考しなければならないと思っています。この仕事を通して、そのようなことも問いかけていきたいと思っています。
 東京のカトリック教会に福島県の野菜を買っていただけないかと相談を持ちかけたのは2011年7月でした。個人事業で始めて、2013年4月にはNPO法人となりました。皆様に助けられて、お陰様で今、毎週5、6カ所のカトリック教会で野菜を販売させていただいて、合計40カ所の教会に直接販売にお伺いしています。月に一回のところ、二回のところ、毎週のところやバザーの時だけなど、さまざまな形で販売を続けています。最初はこちらからお願いし、あとは口コミで増えていきました。1年後、2年後には断られるのではないかと心配しましたが、丸一年経った今、一カ所ももう止めましょうというところはなく、それどころか、増え続けていて、私どもを忘れず応援し続けてくださっています。本当にありがたく感謝しています。
 当然のことながら、私たちの出荷する野菜は放射能の測定をしています。除染の努力も惜しまず行っています。放射能のことについてはかなり神経を使っています。今となっては除染をし、放射能測定をして安全確認している福島産の農産物の方が安全ではないかと各地の農家は異口同音に言います。放射能に関しては、福島県だけの問題ではないようです。他県でも高い濃度のものが確認されました。このような状況だからこそ、冷静に、あらゆる角度から調べる必要があるのかもしれません。
 福島県の農家の中には、農業を諦めてしまう方もたくさんいます。また反対に、農業に対する愛情から何としても復興させたいとの思い入れの強い方もいます。福島県は無農薬農法の方も多く、私の関係している方も有機農業や微生物を使って土壌改良に努めています。