「福島から語る」Vol.5 信木美穂さんと避難者Kさん(2013年6月29日)

信木)東京都は自主的に避難している子どもたちの数も教えていません。個人情報ということもあるのですが、各自治体でボランティアグループや支援団体が、自主避難している人たちをサポートしたいので、自分たちの地域に住んでいる人たちを教えて欲しいと言っても教えてくれません。特に、自主的に避難している人たちが隣の住宅に住んでいたのに、避難者同士だったことがついこの間までわからず、孤立していたり、ママが一人で赤ちゃんを育てていたりといった状況が2年間続いていました。
東京には、赤坂プリンスホテルに避難していた人たちを中心に都内23区に散らばっていたので、繋がりができたのですが、赤坂プリンスに入れなかった方や、他の避難所からの方たちは、他の避難者との繋がりがないまま住宅に入ってしまいました。
江東区への避難者のほとんどが入っている大きな避難住宅があります。そこは避難者だけですので、お茶会やイベントをしていること等がわかっています。特に分散している人たち、民間のアパートに入っている人たちはお互いに知り合えない。こういう活動や場を知らない限りは、支援団体とも繋がれない。そのまま、2年間過ごしてこられました。孤独死もありました。避難者の方たちになかなか関心が持たれない中で、このような機会をいただき、感謝しております。


質問)訴訟なさったということですが、是非そうあるべきだと思います。現在、避難している人と避難していない人との間に軋轢があると伺いました。残念だと思います。避難していない人たちも今、子育てをしているわけですね。原発を再開したり持続させない等は、どのような立場にいても同じだと思うのです。子どもたちの未来のために、避難していない人たちとの連携プレーはできているのですか。

Kさん)3月11日に全国で一斉に訴訟を起こしました。南相馬市、いわき市、山形県、千葉県でも複数の方が訴訟を起こし、連携しています。例えば、千葉は避難区域内の方がメインです。いわき市の場合、避難してきた方、避難できなかった人も一緒に裁判を起こしているのですが、正直なところ、みんな裁判が怖くて、声をかけても一緒に立てない。国や東電という大きな会社を敵に回すのですから…。
私も裁判など一生関係ないと思って今まで暮らしてきました。自分は関係ないと誰もが思っています。特に区域外の私たちは下手に騒いだら、福島に送り帰されると皆、思っています。今、私は原告ですが、実は、内側から騒ぐな、これ以上騒ぐと、さらに福島県がやっきになって、戻るように言い出す、とにかく騒がないでくれ、静かに暮らしていようという人が多くいます。まだまだ仲間が増やせない状態です。誰でもいじめられるのは恐いですし、喧嘩もしたくないです。お金が欲しい訳ではない。でも、そういうふうに思われる。賠償額はいくらとか聞かれる。逃げられなかった人や、逃げて苦しんでいる人がいる。そういうことをわかって欲しい。
これから先、同じことを繰り返して欲しくありません。私たちの思いはそちらなのですが、それだけもらっているのにまだ欲しいのかとか、もらえた人ともらえなかった人が一緒に立ち上がっても、やっぱり金かと言われるのも怖い。色々なマイナスの要因があって、なかなか原告を増やせない状態で悩んでいます。