「福島から語る」Vol.4 佐藤優一郎さん(2012年6月22日)

私たち浪江町民は自然災害だけでなく、人的ミスで安心・安全の神話が崩れた原発で生涯、迷惑をかけられています。
原発からの放射能は立地の町村だけでなく、県、また日本全土に迷惑をかけています。原発の水素爆発は地震、そして津波が原因と言います。
想定外と言いますが、安心・安全とは想定外を含んではいないのでしょうか?もしも原発が水素爆発を起こさず、放射能を出さなければ、津波で被害を受けた浪江町の犠牲者184人の人たちを一人でも多く助け出せたかも知れません。
当時、警察、消防団が一生懸命捜索し、人命救助をしていました。一人、また一人と、一名でも多く救助しようと頑張っていたそうです。

3月12日土曜日の15時36分、あの時の原発の水素爆発さえなければ、もっともっと多くの人を助け出せたと、救助にあたった人たちは言っています。
町長も言っています。ぎりぎり、ぎりぎりまで待ち、捜索していた人たちに、涙を呑んで避難指示を出さざるを得なかったと。そのように話していたのを聞きました。
全町民は町から避難、そしていつ帰れるのか、いつ戻れるのかも分からない状態で時を待つこの苦しさ。自然災害での避難ではなく、原発の放射能での避難です。
若い人たちは町に戻るかどうか迷うでしょう。特に小さな子どもを抱えている人は尚更だと思います。又、高齢者は一日でも早く、それこそ生きている間に戻りたいでしょう。
町民一人一人が大変な思いをさせられています。原発が出来て40年。東京電力から交付金を貰っていた町、県は只々箱もの等にお金を使っていたのか、何に使っていたのか。
万が一、神話が崩れた場合のことを考え、放射能対策とか除染対策とかを独自で研究していなかったのか。大変な怒りを覚えます。

人として生まれ58年間、生涯を生まれ育った町で終えられると思っていましたが、60歳前で、職も進路も人生も変えられ、町からも強制的に追い出され、慣れない土地での仮設暮らし。もうたくさんと思います。
全国で原発は54基もあるそうです。今年の4月頃、全ての原発が点検のため止まると聞きました。このようなことは原発が出来て初めてのことと思います。
千載一遇のチャンスだと思います。今、原発を停止させなければ、二度とチャンスは来ないと思います。また今、それらを考えなければ、考えることすら出来なくなるかも知れません。
町に村に原発が出来れば、交付金で財政はよくなるし、雇用は生まれる、将来はもう保証されたようなものです。事故が起きるまでは、安心・安全と更なる努力もせず、胸を張ります。しかし一旦、事故が起これば、想定外と責任逃れです。
そして補償金、賠償金を払う前は、加害者ですと謝る。会社で申し合わせをした如く頭を下げ、お詫びしますが、いざ補償金、賠償金を払う段階になると、1円でも賠償金を減らそうと、あの手この手のどちらが被害者か加害者か分からないやり方、東電主導で頑張る。損失分は電気料金を値上げして、会社再建を促す。
それが原発・・・、電力会社だと思います。もし、原発が再稼働すれば、他所でも原発が爆発することが予想されます。
同じ様な被災者を出さない為にも、原子力というものを村民、町民、県民、国民は今、真剣に考えるべき時期と思います。
少し位の電気料金値上げで原発を抑えることが出来るのであれば、料金値上げは仕方ないと私は思います。自然を守り、子孫を残し、日本から原発と言う凶器を排除したいものです。

最後に、避難民の私たちに勇気、元気を与え、物資等々でご支援くださいましたカトリック東京ボランティアセンターのスタッフの皆様、大変ありがとうございました。
NPOの皆様、ボランティアの皆様、地域の皆様、本当にありがとうございました。いつ帰れるか、まだまだ分かりませんが、私たちも夜明けを信じ、頑張って生きたいと思います。
ご清聴、ありがとうございました。