「福島から語る」Vol.2 田中徳雲さん(2013年9月13日)

私はあちこちの線量を測りました。東京の方でも測りましたが、どこもあまり線量は変わらないようです。福島は確かに非常に高く、寺の土は1キロあたり8000べクレルで、雨どいの下は10万べクレルもあります。仙台市内で1000べクレルのところもあり、東京都内でも300~400ベクレルのところがあり、雨水のたまっているところでは東京駅でさえ、去年(2012年)ですが、ものすごく高い点もあり、どこでもみな被害者です。安心して子育てのできる状態ではありません。
しかし、便利で快適な生活を求め、享受してきたことを思えば、やはり、私たちもみな加害者であることも否めません。この意識を持って前向きの反省をしたうえで、どのようにしていけばよいのかを考え、居心地の良い生活に安住することを自分自身とよく相談して自らを省みつつ、生活を切り替えてゆくとよいと思います。

近年、私たちは地下資源「化石燃料」をあまりにも急に消費し続けたために異常気象が起こり、今までなかったような現象が、そこここに起こっています。地球はその限界を通り越して、いっぱいいっぱいになっているのです。私たちは日本人であるとともに、地球人でありたいと思っています。江戸時代に各藩は、日本が一つの国になるとは誰も思っていませんでしたが、今は一つの国家です。宇宙から見て、国境などは存在しません。地球は青い美しい星です。
今の子どもたちはそういう意識を持っています。次の世代は簡単にその事実を認識し、乗り越えていけると思います。地下資源を消費し続けた故に起こっている異常現象、すなわち、竜巻、100ミリ以上のゲリラ豪雨など、地球が限界を通り超えて苦しんでいるのは、自分たちの責任であることを自覚し、地下資源でなく、地上の資源を使うことを考えるべきではないかと思います。

2013年10月6日、南相馬市で「鎮魂復興植樹祭」が行われます。その構想は森の防潮堤を作ろうということです。早いうちから言われていたことですが、今までの防災林は赤松、黒松などでした。しかし、これは機能せずにほとんど流されてしまいました。宮城県では全会一致で防災林を考えていましたが、待ったを掛けたのは国、法律でした。産業廃棄物は燃やしてはならないということで、国としてはコンクリートの防潮堤を作ることになっています。
瓦礫の山の上にみんなが集まって、未来の子どものために木を植えよう、それも広葉樹の森を、という運動が盛り上がり、早いうちからこの構想が練られていました。南相馬市では、元首相の細川さんを会長とし、この運動を実現させます(注・当日は3000人の市民とボランティアの人々が集まって、2万本の植樹を完成させました)。こういうことは国家プロジェクトでやってほしいものです。

 今回の原発事故は、物質文明に満たされた私たちが経済効果のみに依存し、ただ儲かればよいと、海のこと山のこと、40年、50年先のことを忘れて、現在の快適さを求め続けた見返りともいえます。仏教には因果応報という言葉があります。良くないことをやれば、必ず返ってきます。自然を傷つければ、それは必ず私たちに返ってきます。皆様方も周知の法則です。いかなることも必ず清算されるカルマ(因果応報)の法則です。
このたびの原発事故は地球にとって最後の最後のチャンスを与えられたものと言えます。地球にとって、私たち人類の生き残りにとって、やがてやってくる凄惨の衝撃を少なくするのは、今日の私たちの生き方にかかっています。すなわち、ここ数年の私たちの行動によると言えます。地球からのサインは出ているのです。人間がもっともっと欲しいと積み上げてきた欲望で、40年間に傷つけられた地球が叫んでいます。南海地震も来ると言われています。原発は福井県にも御前崎市(浜岡原発)にもあり、福井県には「もんじゅ」(高速増殖炉)もあります。

こうして生活が戻ってくると、慣れてくる傾向が私自身の中にもあり、時々、海を見に行って、その時のことを思い出します。2年前に何が起こったのか。2年半のうちに現状に慣れてきている自分を見ます。これも適応能力であると思いますが、原発の恐怖におびえた時のことを思い出します。

良くも悪くもサインは出ているのだから、忘れないで行きましょう。3・11の地震の時に生きた心地がしなかった、あの時、私はついに来たと思ったことを思い出します。その時は必ず来ます。地震も、大津波も。
その時のために災害を少しでも食い止めるために、先の防潮堤のようなもの、鎮魂の森のようなものができればよいと思います。それは相当な力になると思います。人間の作った法律は何とでもなります。私たちはできることからやっていきたいと思います。
役人は役人の、私たちは私たちなりの、それぞれの持ち分で歩みを止めず、コツコツと前進して行くことが何より大切だと思っています。できることからやってゆきましょう。